石見銀山の価値
石見銀山調査研究所
資産保全調査
資産保全調査って何?
石見銀山遺跡は間歩と呼ばれる坑道跡や鉱山開発に関わった人々の作業や生活の場である岩盤遺構、石造物調査の対象である墓石や供養塔、石碑などの石でできた文化財が多数存在します。これらは石を加工しているため頑丈ですが、雨風や日照、寒暖により石の表面が徐々に風化していきます。また、石には軟質のものや脈に沿ってはがれやすいものもあり、劣化が著しく進行した石造物も存在します。
また、発掘調査で出土した金属製品や木製品など特に劣化しやすい遺物について自然科学的分析を用いて保存環境の整備や保存手法の検討とその実施を行っています。
このように、資産の劣化や損傷の原因、遺物そのものの分析を行うことで、今後の適切な保存方法を検討し、実践するための調査が資産保全調査です。
また、自然科学的分析では石見銀山における採掘から精錬にいたる技術の解明や海外交流を示す遺物などの分析も行っています。
(1)間歩調査
石見銀山遺跡には坑道跡である間歩が1000箇所近く確認されています。これらの間歩で採掘された鉱石の分析や間歩そのものの保全と安全確保のため間歩調査を継続して行っています。間歩は観光坑道である「龍源寺間歩」と限定公開されている「大久保間歩」のみ中に入ることができますが、その他の多くの間歩は立入りを禁止しています。
(2)石造物の資産保全調査
石見銀山地内に多数存在する石造物のうち、特に劣化が著しい個体の経過観察を行っています。また、石造物に用いられた石材の劣化プロセスを解明し、今後の保存に繋げるための調査研究を行っています。
(3)機器を用いた科学的分析
純度の高い銀を得るには、採掘から精錬まで様々な工程が存在します。発掘調査ではその工程で排出された不純物や使用された鉛などの物質、灰吹法には欠かせない骨灰などが含まれると考えられる遺物が多数出土します。これらは肉眼ではどのような物質が含まれているか特定することはできません。
しかし分析機器を用いることでどのような物質がどの程度含まれているかを明らかにできます。
このように石見銀山遺跡では出土した遺物を中心に様々な分析機器を用いて科学的調査が行われています。