石見銀山の価値

デジタル石見銀山

石見銀山丸ごとデジタルミュージアム計画

世界遺産「石見銀山」の価値は、単体の遺跡や建物だけでなく、鉱山、生産の仕組み、山の地形、集落、道や城跡など、さまざまな構成資産が相互に関わり合うことで成り立っています。
山中に残る坑道や岩盤の痕跡、鉱山社会を支えた人びとの暮らしを伝える町並みや建物、銀の流通や防衛を支えた道や城跡など、石見銀山には多様な歴史の「痕跡」が今も各地に点在しています。
石見銀山世界遺産センターでは、これまでにも坑道モデル内での映像展示や、VRゴーグル、半球型シアターなどを用いた没入型映像展示を通じて、来訪者の理解を深める工夫を重ねてきました。こうした展示と現地見学を組み合わせることで、石見銀山の魅力をより立体的に体験していただける環境づくりを進めています。

本計画では、これまでの展示に加え、石見銀山に残る多様な遺産をデジタル技術で記録し、それぞれの歴史的要素を「つなげて」理解できる「石見銀山丸ごとデジタルミュージアム」の構築に取り組んでいます。
実際に訪れる体験を補いながら、現地では見えにくい関係性や広がりを、より分かりやすく伝えることを目指しています。

【遺産のデジタル化の方法】

石見銀山には、坑道、地下遺構、建物、出土遺物、伝統的な集落景観など、規模も形も異なるさまざまな遺産があります。対象に応じて、次のような方法を組み合わせて記録しています。

1)写真測量
多数の写真から三次元モデルを作成する方法です。小さな出土遺物から、建物、広い範囲の景観まで幅広く対応できます。手持ちカメラのほか、一脚やドローンを使って死角ができないよう撮影します。出土遺物のように小さなものを記録する場合は,電動の回転台に乗せて撮影することもあります。実物に近い質感や色合いを再現できるのが特長です。

2)レーザー計測
レーザー光を使って形状を精密に測定します。三脚に固定して計測するタイプと、持ち歩きながら計測できるタイプがあります。地形や坑道など、形の正確さが重要な対象の記録に適しており、広い範囲も短時間で効率よく計測できます。

3)ガウシアン・スプラッティング計測
近年登場した新しい三次元化の手法です。歩きながら撮影した多くの写真から立体的な空間を再現できます。高所などの死角は残りますが、短時間で広範囲を記録でき、映像としての臨場感に優れています。

4)全周囲型カメラによる記録
一度の撮影で周囲360度を記録できるカメラを用います。後から視点を自由に変えられるため、現地の雰囲気をそのまま体感できます。静止画だけでなく動画による記録も可能です。

5)複数手法の組み合わせ
全周囲カメラとレーザー計測を組み合わせた機材(Matterport)なども活用しています。三次元空間の中に解説や資料を重ねて表示でき、来訪者が直感的に理解しやすい展示につなげることができます。

遺産の規模や場所、記録の目的に応じて、これらの方法を使い分け、最適な形でデジタル化を進めています。

【デジタル化された遺産に期待される学び】

デジタル化によって、点在する遺産を「つなげて」見ることができるようになり、石見銀山の銀生産システムの全体像をより立体的に理解することが可能になります。

たとえば、
• 山中の採掘跡と鉱脈の位置関係
• 集落と険しい地形との関係
• 銀の生産拠点と城跡・防衛拠点との関係
といった空間的なつながりを、俯瞰的な視点で分かりやすく示すことができます。

また、安全上の理由で立ち入りが制限されている旧坑道(間歩)や、山中に点在する多数の採掘跡についても、デジタル空間上で疑似体験することが可能になります。

発掘調査後に埋め戻された遺構についても、調査時の記録をもとに、後から立体的に確認し,よりリアルに体感することができます。

出土遺物についても、発見された場所や当時の使われ方の情報と結びつけることで、単なる「モノ」としてではなく、当時の様子を想起させる生きた歴史資料として理解を深めることができます。

さらに、来訪者の受け入れ方法や、地域の暮らしと調和した遺産活用のあり方を、デジタル空間上で検討することも期待されています。

「石見銀山丸ごとデジタルミュージアム計画」は現在進行中の取り組みです。
本ウェブサイトでも、調査や記録の成果を順次紹介していく予定です。どうぞご期待ください。

(協力:筑波大学 世界遺産学学位プログラム)